校長ブログ

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中1道徳にて

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 先日、中学1年生の道徳授業を1時間担当し、お話をさせてもらいました。一つ目は「人を動かす大きな力」と題して、戦後インドから上野動物園に寄贈された象のインディラのお話をしました。

 戦争の激しくなった昭和18年、上野動物園の猛獣類は脱走の恐れがあり危険だとされ、ライオン・ヒョウ・トラ・象など14種類24頭が殺処分されました。餌に毒を入れる方法がとられましたが、象は警戒心が強く、当時飼育されていたジョン・トンキー・ワンリーの3頭は餌を食べようとはしなかったため、えさを与えず餓死させるという悲しい出来事がありました。その後戦争が終わり、戦後の民主主義教育の中で、「子供議会」という学習活動がありました。子供たちの手で身近な問題を解決していこうという活動です。昭和245月台東区の「子供議会」は上野動物園に象が欲しいと、実現に向け考え動き始めました。しかし、なかなか実現は難しく、名古屋の東山動物園に見に行くことのできる「象列車」の運行にこぎつけるも、東京の子供には遠すぎて、すぐ打ち切りとなってしまいます。そこで、マッカーサー元帥を動かしてアメリカからもらおうという運動が都内の小中学生も加わって起きると、そのことをインドの貿易商人ニヨギ氏が知り、それならばみんなの書いた手紙をインドのネール首相に見せて私から頼んでみようと約束してくれました。すると、ネール首相は快く1頭の象に「インディラ」という娘の名前を付けて日本に送ってくれました。この手紙を送る運動にはトキワ松学園の生徒も参加をし、贈呈式にも参加したそうです。

 到底無理ではないかと思えるようなことでも、熱意をもって伝えることで実現することもあるというお話です。皆さんも学校のこと、社会のことなど、様々なことに目を向けて行動してみることも大切でしょう。

 

 2つ目のお話しは「見方を変えると見えてくることがある」というお話です。

 昨年来、鬼の漫画がとても流行っているようです。漫画以前に小さいころ読んでもらった絵本などにも、「桃太郎」「泣いた赤鬼」など、鬼を題材にした有名な物語が多くありました。それでは一体鬼とは何なのでしょう?ただ怖い怪物、妖怪の一種、様々な見方がありますが、見方を変えて日本の江戸時代以前、鬼の伝説が多くあった時代に目を向けてみましょう。海外と交流がなかった、またはできなかった時代、日本の近海で西洋の船が難破して、日本に流れ着いたとしましょう。生き残った船員は日本人に見つからないように山に隠れます。食べ物がなくなってくると村におりてきて家畜や農作物を盗んでいったかもしれません。そんな状況を村人が見たらどう思うでしょう。江戸時代の日本人の平均身長は男性155cm女性143cm程度と言われていますから、西洋人を見たらとても大きな人に見えるでしょう。当時は、街灯や家にも電気はありませんから、暗い夜は恐怖も倍増し、食料調達に必死な西洋人の顔を見たら、鬼に見えてしまうことがあっても無理はないことかと思います。

 同じように「河童」の伝説を考えてみると、昔は天変地異などで飢饉になる農村は多くあったといえるでしょう。生きていくために間引きや姥捨てなどといった風習も考えたくはありませんが現実だったかもしれません。そんな中で、川の近くに捨てられた子供が生きようとするとき、栄養もろくに取れない中で、河童の絵にあるような姿になっていくのは想像できることです。同様に恐れられる伝説の生き物にも、見方を変えれば悲しいいきさつがあるのかもしれません。

 ここに挙げたお話は、鬼や河童の正体のほんの一説です。どんなものにも、時代背景や土地柄などを含めて考えると、違った見方ができるものはたくさんあるのかもしれません。何事もすぐに決めつけるのではなく、あらゆる状況を合わせて判断することが大切と言えるでしょう。皆さんはこれから学校生活の中で様々なことを探究していくことでしょう。その時に今日お話しした「人を動かす大きな力」「見方を変えると見えてくること」にあったように、いろいろな角度で深く考え、どんなことにも諦めずチャレンジできるようになってほしいと思います。