第73回トキワ松学園中学校卒業式 式辞
校長ブログ
3月24日第73回トキワ松学園中学校卒業式が行われました。新型コロナウイルス感染防止のため、高校と同様に卒業生と教職員だけで行われましたが、天候にも恵まれ心温まる式を行うことができました。残念ながら保護者の皆様にはご参加いただけませんでしたので、ここに式辞をご紹介いたします。
『咲き始めた桜の花が、卒業という節目を迎える皆さんの、新たな旅立ちに向けてエールを送っているようです。今日ここに、令和元年度 第73回トキワ松学園中学校卒業式が挙行され、新たな卒業生が誕生しました。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。出身の小学校はそれぞれ違いますが、トキワ松で出会った仲間と3年間を共有し、勉学はもとより様々な活動を共にしてきたことは、かけがえのない財産となったことでしょう。
3年前、卒業生の皆さんが真新しい制服に身を包み、緊張した面持ちで入学式に臨んでいたのが、つい昨日のように思えます。そして、こんなにも成長した姿で卒業式を迎えられたことは、保護者の皆様の大きな愛情と、担任をはじめとする先生方の指導のもと、皆さんが日々の勉強や学校生活に一生懸命取り組んできたからではないでしょうか。そんな、皆さんの成長は、よく行事を通して感じることができました。その一つとして、6月に行われたスポーツ祭典があります。皆さんのきびきびとした動きにと、明るい笑顔が印象的であった、旗体操のエフキーブ。そして、どの競技も、学年の仲間が一つになって協力し合い、中学生ながら総合3位となったことは、何よりも大きな成長だったと言えるでしょう。8月のサマースクールでは、富山県立山町の皆さんにお世話になり、仕事体験、民泊体験を行いました。皆さんはしっかりと仕事や家事のお手伝いをして、民泊先の方と親睦を深めることができたのではないでしょうか 。また、トキワ祭では、a組の「美生物」b組の「彩色兼美」ともに素晴らしい研究と発表が行われ、まさに「探究女子」としての成長を感じることができました。このほかにも、まだまだ学校生活のいろいろな場面で成長を感じることがありましたが、それらに共通していることは、少しずつ「自立」して行動できるようになってきたことでしょう。今後も更なる成長を期待したいと思います。
さて、皆さんは4月から高校生になるわけですが、義務教育を終えた今、将来に向けてどのような「夢」や「目的」を持っているのでしょうか。1月に皆さんと面談を行いましたね。高校生になったら頑張りたいことや夢を作文に書いてお話ししてくれました。中には具体的な目標をもって進み始めている人もいましたが、多くの皆さんは現在の生活の改善や、今後目標を見つけていくために選択肢を広げることができるよう日々の勉強を頑張るといった、目の前のことをしっかりこなしていくことを誓っていました。そこで、これから始まる高校生活に向けて、「目的」と「手段」についてお話をしたいと思います。
これから、成長して大人になっていくためには「目的」を持って生活していくことが大切です。そして、その「目的」を達成するためには「手段」が必要で、学校生活を送るにあたってもそれは同じことが言えます。皆さんの身近な例にあてはめて考えると、高校生活の中で「大学に入り好きな研究をする」という「目的」を持ったとしたら、達成のために「学習に励み良い点を取る」といったことが、その「手段」となるでしょう。しかし、レベルを上げて考え、「学んだ知識を使い就職をする」ことを「目的」とするなら、「大学に入り好きな研究をする」は「手段」となり、さらにレベルを上げるなら「仕事の経験を積み成長して社会貢献をする」ことを「目的」とすれば、「学んだ知識を使い就職する」は「手段」となるわけで、「目的」と「手段」は入れ替えていくことができるのです。どこに目線を置くか、また、目的達成後に意欲的になってさらに高い目的を持てるかによっては、この「目的」と「手段」の入れ替わりは、さらに発展的に続いていくことになるのです。しかし、その逆の入れ替わりも考えられ、「手段」に追われて手一杯になり、いつの間にか「手段」が「目的」になってしまう恐れもあります。東京ディズニーランドを経営する株式会社オリエンタルランドで約20年間人材育成や経営戦略に携われた 大住 力(おおすみ りき)さんは、講演や著書の中で「あなたは今やっている仕事の目的と手段が逆転していませんか?あなたが今やるべき本当のことは何ですか?」とよく問いかけています。皆さんは、日々忙しい生活の中で、毎日の仕事に追われ、それをこなすために大きな労力を割いて、本来の夢や目的を置き去りにしていることがないですかと問いかけているのです。東京ディズニーランドやディズニーシーに行くとキャストが素晴らしいと感じ、また来たいと思わせる工夫がなされていると多くの皆さんは感じているのではないでしょうか。その徹底ぶりは、約2万人いるというキャストが、どんな困難にぶつかっても、お客様を夢の世界で楽しませるというディズニーランドの「目的」を忘れず、様々な手段を講じているからできるのです。ディズニーランドではどんな時でも、この基本となる本来の「目的」を忘れないことを大切にして成功してきたのだそうです。このことは、これからの皆さんにとても必要なことだと思います。これまでは義務教育で、学習させられていた、しなければならないという感覚が強かったかもしれません。しかし高校生となると、専門的な学習も多くなっていきます。自分が何か「夢」を持ち「目的」をもって努力していかなくては、目の前の「手段」である学習や活動に追われることで精いっぱいになり、余裕がなくなってしまうでしょう。でも、「目的」を定め忘れずに持ち続けることができれば、道に外れることなく努力が続けられ、大きな成功につながるはずなのです。
繰り返しますが、皆さんにはこれからの人生に向けた「夢」や「目的」を持って高校生活を送ってください。そして、今自分が頑張っていることは何のためなのかということを忘れないでください。そして、皆さんがその目的達成の過程で得た知識を、地域や社会へ役立てることのできるような大人になってくれることを期待して、私の式辞とさせていただきます。』
トキワ松学園中学校 校長 中山 正秀